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医学部再受験をオススメしない8つの理由

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あなたは今の職業に満足していますか?

 

将来に向けてお金の蓄えは十分ですか?

 

東京大学医科大学裏口入学問題でマジメに受験勉強している多浪生にスポットライトがにわかに当たりましたが、医学部を受験して良いのは高校を卒業したばかりの人だけではありません。

 

医学部を受験するのは誰でもOKなので、既に他の学部学科を卒業した人や既に社会に出て仕事をしている人も世の中にはいるわけで、そういう方の受験を通称「医学部再受験」と呼びます。

 

今の職業やこれからの進路に見切りをつけて医師になるために医学部再受験をする人たちは少なからずいます。

 

現時点で受験勉強していなくても医師への転職に興味がある人もいるかもしれません。

 

もちろん目指すのは自由ですが、医学部再受験をオススメしない理由は何個もあります。

 

一部の人は、医師はインフラなのだから云々と言って若い人だけが医師になるべきという考えの人もいますが、私はそうではありません。

 

社会のことは無視してあなたが再受験しないほうがいい理由を挙げていきます。

 

表に出てくるのは成功例ばかりですので、よく考えた上で臨んでもらえたらと思います。

 

 

 

 

 

そもそも合格できるのか

 

裏口入学はさておき、玄関から上がろうとすればペーパーテストで点数を取れなければ話になりません。

 

厳しいようですが、医学部再受験成功者にはもともと18歳の頃に勉強ができていた人が多いのが現実です。

 

私の卒業した東京大学医学部にも再受験して合格した人がいましたが、私の知っている人には2種類しかいませんでした。

 

・東大の理三以外

・他大学医学部

 

前者については、全員東大に現役で合格した人ばかりで浪人して東大に合格した人は1人もいませんでした。

 

後者については、医学部の中でも高偏差値を誇っているところばかりであり、慶應大学医学部や旧帝大医学部とかそういうところの出身者ばかりでした。

 

他大学医学部に範囲を広げても、もともと勉強ができた人が多いです。

 

私の知っている範囲では、高校時代に早慶旧帝大レベルに達していた人ばかりです。

 

〇〇から逆転、というフレーズは非常に魅力的ですが、医学部再受験の成功者はもともと勉強ができた人が順当に合格するケースが多いです。

 

高校時代は勉強していなかったけど頑張る、という人にはそれ相応の覚悟が要ります。

 

1年でサクッと合格するのはできない前提でお金を十分に用意した上で臨みましょう。

 

また、医学部は医学発展のために存在する一方で医師の職業訓練校という側面もあります。

 

都合のいい手駒が欲しい人にとっては、若ければ若いほどいいわけです。

 

過去の例だと、群馬大学医学部で合格点を取りながら50代女性が不合格にされたケースがあります。

 

その方は年齢差別ということで訴訟を起こしましたが敗訴となっております。

 

ちなみにですが、慶應大学工学部卒ということでもともと勉強のできた方です。

 

医学部再受験生は年齢そのものが足を引っ張る可能性もあるということです。

 

余談ですが、医学部入学してからの進級や医師国家試験合格についてはあまり心配する必要はないと考えます。

 

国試合格率が90%ということで、世間から簡単と見られて、それに反発してか国試は難しいとマウンティングを取りたがる医師や医学生が世の中にいますが気にしないでください。

 

まっとうに医学部入学できた人なら真面目に勉強をすればほぼほぼ合格できる試験です。

 

 

入試制度改革

 

2020年度よりセンター試験なくなるとかいう話はどこにいったんですですかね。

 

よくわかりません。

 

 

生涯年収の低さ

 

医師の給料は、色々なルールで規定されておりますが、最大のルールは「医師何年目かで決まる」ということです。

 

医局を離れたりフリーランスに近い立場であれば別でしょうが、医師の世界も年功序列なのです。

 

キャリアを重ねれば重ねるほど基本的には給料が上がるわけです。

 

そこで、1年医師になるのが遅れるとどの年の給料1年分が貰えなくなるでしょうか?

 

正解は定年直前の1年分の給料です。

 

2018年現在では、定年直前の給料は少なく見積もっても年収1500万円あります。

 

再受験で現役合格生より5年医師になるのが遅れた場合は定年直前の5年分が貰えないと考えてください。

 

初期研修医の頃の給料5年分が貰えなくなるわけではないのです。

 

医師は金を追求せずに患者のために働くべきだという考えは立派ですが、それは生活に困らないだけのお金が確保してから初めて言えることです。

 

地獄の沙汰も金次第、と昔の人はいい言葉を残してくれています。

 

 

医師の給料削減

 

既に書かれてましたね。

 

www.yummy-castella.com

 

これからの医師の給料・待遇は下がる(or 上がらない)とする考えの人は、少なくないようで他にも探せばいます。

 

興味のある方は探してみてはいかがでしょうか。

 

内容を一言で言えば、医療費には上限があるから医師の待遇が改善するわけ無いでしょ、ということ。

 

医師の給料が下がることについて一般的なことに追加して私が主張したいことは2つです。

 

・勤務医はロビー活動していないこと

可処分所得の減少(裏金込み)

 

日本医師会という団体は医師以外の方でも知っている有名な団体ですが、勘違いされがちなのは開業医のための団体であって、勤務医には関係のない団体です。

 

そして、その団体はロビー活動に積極的であり、政治家に多額の献金を行っていることは暗黙の了解となっております。

 

開業医と勤務医という立場上どうしても利益相反することがあります。

 

とある皮膚科開業医が過労死ライン超えても勤務医は急患を診ろという旨の発言をして、お前が言うなと炎上したこともございました。

 

ロビー活動によって開業医の利権が守られることはあっても、勤務医は日本医師会に相当する団体を持っていません。

 

ロビー活動の強力さは全米ライフル協会を見れば一目瞭然です。

 

時々起こる銃による大量殺人事件が起こっても、あってもなくても同じような微妙な規制がされるだけで銃がなくなる気配はありません。

 

日本人からすると馬鹿げた光景ですがこれがロビー活動です。*1

 

可処分所得も見逃せない点でしょう。

 

医師に限ったことではないことだと、税金や社会保険料の増加、物価上昇などにより額面は同じでも可処分所得は今後間違いなく減るでしょう。

 

このペースでセブンイレブンの弁当の中身が減っていけば、2050年頃にはおそらく唐揚げ弁当の唐揚げは1個になっているでしょう

 

医師限定の話だと、患者からのお布施や製薬会社からのお金がコンプライアンス面から考えると今後は貰いにくくなるでしょう。

 

清廉なベテラン医師の中には自分は受け取らずに働いてきたと訴える人もいるかもしれませんが、直接懐に入ることはなくても医局運営に裏金が使われて間接的にそういったベテラン医師も恩恵を受けています。

 

今後は裏金なしでやりくりしていく必要が出てきて個々の医師に負担がのしかかってくるかもしれません。

 

 

医師の仕事のやりがいの低下

 

かつてはお医者さま扱いでしたが、官僚の権威が失墜したのと同様に医師も落ちぶれてしまいました。

 

中には高い給料貰ってるんだからと僻み根性丸出しでぶつかってくる者もいる始末です、特に田舎は。

 

医療の発展そのものは喜ばしいことですが、助かるのが当たり前になってくるとありがたみがなくなってきます。

 

誰も水や空気を普段はありがたがっていないのと同じです。

 

プロセスは問題なくても、福島大野病院のように結果が悪いだけで訴えられるケースもあります。

 

その結果、訴訟対策のための仕事が溢れることになりました。

 

昔と比べてやたらと同意書を取るようになったのもそれです。

 

患者のためには何一つ役に立たず、自己保身のための仕事で現場医師は消耗しているわけです。

 

あとは、高齢者が増えたことで仕事の質そのものが変わりました。

 

多くの病気を抱えており、中には手術に耐えられない人もいますので、特定の病気を治すスペシャリストというよりは総合的に判断をできるジェネラリストに医師の仕事がシフトしてきました。

 

医療ドラマで取り上げられている格好良い仕事の割合が減ってきます。

 

救急を取り扱っているドラマを見てあれをジェネラリストと思う人もいるかもしれませんが、実際のジェネラリストがやっていることは違います。

 

近くに患者家族がいなくて遠方の息子に連絡するもなかなか繋がらず、話ができても仕事が忙しいと言って患者本人の体調は良くなっても退院後の受け入れ準備が進まず、ようやく退院できると思ったら病院の前で患者が転倒して骨折して再入院して、そうこうしているうちに認知症が悪化して夜中に奇声を上げ始め、久しぶりに見舞いに来た家族が患者の変わり果てた姿を見て罵倒してくるのを耐えるのがジェネラリストの仕事です。

 

到底ドラマにはできない仕事があるのが現実であり、その割合は今後増えてくるでしょう。

 

やりがいのある仕事というのは人それぞれで難しいことですが、これまでのやりがいとは別のやりがいを見出していく必要があるでしょう。

 

最近の医療ドラマに憧れて医師を目指すのは危険です。

 

むしろ白い巨塔を見て、俺も権力闘争するぞと意気込むほうが医師として長続きすると思います。

 

科の選択の狭さ

 

内科、外科、総合診療科、救急科などなど。

 

臨床医として働くのなら最終的には専門の科を決めますが、その際にも年齢が影響してきます。

 

医師として一人前のレベルがどこなのかは人によって考えは色々でしょうが、科によって早く一人前になれるところと時間がかかるところがあります。

 

医師としての勉強は座学だけでなくて、上級医に付いて直接教わったり見て技を盗んだりすることも勉強です。

 

いわばギルドのような徒弟制的側面があり、ぺーぺーのうちは初歩的なことを教わって徐々にレベルアップしていくわけです。

 

ここが、科によって大きく差がつくところで、心臓外科だったら最速で医師になったとしても執刀させてもらえるのがアラフォーになってからという可能性もある一方で、白内障手術なら1年で執刀させてもらえます。

 

もし再受験生だったら専門の科をどう選択するでしょうか。

 

初期研修を終えた頃には既にアラフォーになっているようでは心臓外科などの一人前になれるまで時間がかかる科は選択しにくくなります。

 

あとは健康面の問題もあります。

 

20代と30代、40代では体力に差があるでしょうし、内視鏡手術の場合は首に負担がかかります。

 

実際に、頚椎症のために外科医を引退した人を知っています。

 

このように年齢によってキャリアが制限されることは忘れてはいけません。

 

私の知り合いの再受験生にも、実際に働き始めてから現実を思い知って医学部入学当初の夢を断念して違う科にシフトした人がいます。

 

 

内科専門医制度の改悪

 

少なくとも若手医師は誰も賛同していない新専門医制度ですが、特に内科が煽りを受けております。

 

内科にも消化器内科とか循環器内科とか色々ありますが、内科専門医については内科全体の資格を取ってから専門に進むという特徴があります。

 

これまで 内科認定医1年+〇〇内科専門医3年

これから 内科専門医3年+〇〇内科専門医?年

 

となっており〇〇内科専門医になるのに時間がかかるようになりました。

 

しかも2018年現在では、新専門医制度は見切り発車された状況であり、今後さらに時間がかかるようになる可能性もあります。

 

専門の内科をやるのに時間がかかるため、医学部再受験生は内科を選択しにくくなりました。

 

特に、妊娠出産を考えている女性ならなおさらです。

 

 

転勤の多さ

 

最後に医局人事の問題です。

 

2004年にスタートした初期臨床研修制度ですが、病院側と研修医が直接雇用関係を結ぶことで、奴隷労働されていた研修医の待遇を改善して大学医局の権力を弱めることになりました。

 

初期研修でブランド病院と化したところの中には、初期研修医を雇うだけでなく、専門医の育成まで大学医局に頼らずに自前で行うところも現れ始めました。

 

そこで大学医局に権力を取り戻したい偉い人が目をつけたのが新専門医制度で、専門医試験を受けるための条件を厳しくし始めました。

 

専門医の質を担保するという名目を使いながら、一方では専門性があるとは到底思えない田舎の病院へ派遣するために、強制的に過疎地で働かそうとしており矛盾しているように思えます。

 

建前はどうあれ結局は大学医局に人事権を取り戻して若手医師を使い倒すのが目的で、医局から離れて生活することは以前より難しくなると予想されます。

 

医局から言われたらハイかイェスしか選択肢がないので、辺鄙なところに飛ばされても諦めるしかありません。

 

再受験生の中には、家族がいたり、住宅ローンを組んでいる人も中にはいるでしょう。

 

入局後には単身赴任も覚悟しなければならないかもしれません。

 

家庭事情を考慮してくれるかどうかは教授次第です。

 

 

 

これまで、医学部再受験はあまりすべきではない理由をつらつらと述べてきました。

 

世間では違うようですが、私個人としては多様なバックグラウンドの人が医学部に入ることに肯定的です。

 

受験生の皆さん頑張ってください。

*1:アメリカにおいて銃は自由の象徴となっている事情もあるが本筋ではないのでここではカット