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ほとんどの能力は才能の遺伝次第!それでも行う有効な努力と教育とは

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努力か才能か、これまで多くの人が考えてきた悩みでした。

 

「氏より育ち」という言葉があるように大昔の人もこのことについて考えていたようです。

 

正確にはこの場合の氏は家柄を指しますが、遺伝と言い換えても良いでしょう。

 

人の能力は両親から受け継いだもので決まるのか、それとも努力次第でどうにでもなるのか論争は絶えません。

 

しかし、結論は既に出ていてほとんどの能力は遺伝の割合が大きいということになっています。

 

特に音楽は遺伝が9割、数学は8割と相当な割合で、語学については比較的環境の影響が大きい能力です。

 

ものによっては生まれつきの才能が8-9割ということがわかって努力しても無駄なんだと無気力になってしまうかもしれません。

 

しかし、遺伝の要素が大きいと現実を認めた上でとれる有効な努力もあります。

 

そのあたりまで触れていきます。

 

 

 

 

 

 

人の能力は遺伝、ということには根拠がある

 

特に音楽や数学の分野で遺伝の要素が大きいという話をしましたが、これは行動遺伝学の研究で出た結論です。

 

双子を使った研究を行ったんですね。

 

一卵性双生児なら完全に遺伝子が同じといえ、二卵性双生児なら生年月日が全く同じなだけで兄弟姉妹と見なしております。

 

遺伝以外の要素は周りの環境となりますが、環境にも2種類あります。

 

共有環境と非共有環境です。

 

前者は家庭など両親から受ける影響のことで、後者は学校や友人など家庭外で受ける影響のことを表しています。

 

双子をそのまま育てれば共有環境も同じになりますが、養子に出せば遺伝子は同じでも家庭環境が違ってくるんですね。

 

逆に養子を受け入れるほうから見れば、遺伝子は違っても家庭環境が同じとみなせると。

 

行動遺伝学の学者たちは、双子を用いて学力や芸術の才能のみならず、気質なども遺伝、共有環境、非共有環境の3つの要素に分けて評価していきました。

 

その結果得られた結論がほとんどの能力で環境より遺伝の要素が大きい、ということになります。

 

インターネット上では、幼児教育を過大評価したり、育て方で子どもはいろんな可能性がある、と言う人もいますが、その主張には何ら根拠がなくただのポエムです。

 

事実を捻じ曲げて自分が信じたいものを信じてるに過ぎません。

 

ちなみに、残った共有環境と非共有環境とでは非共有環境のほうが一般に人の能力に及ぼす影響が大きいこともわかっております。

 

家庭で親が必死になって勉強を教えるよりお金を使って有能な学習塾に入れたほうが手っ取り早いといえます。

 

タバコや酒については共有環境の影響が大きいですが。

 

 

日本では特別な幼児教育に意味はない

 

教育ママの中にはは幼児教育信仰を持っており幼少期から自分の子どもに色々と詰め込む人もいますが、現在の日本ではあまり意味がありません。

 

幼児教育についての研究についてはヘックマンによるものが有名です。

 

結論としては、IQなど知的能力の上昇については一時的な効果しか得られなかったものの精神面での落ち着きが得られ生涯収入が上がるというものでした。

 

これだけ読むと幼児教育は有効と解釈できそうですがそうではありません。

 

ヘックマンが幼児教育の対象としていたのはアメリカの貧困層の黒人の子で、放っておけば将来アルコールやドラッグに沈む可能性の高い子たちです。

 

教育を施した内容も1クラスわずか6人の少人数で遊びなどを行い、週に1回は家庭訪問を行って親と話し合いの場を設けるというもの凄く手厚いものでした。

 

最下層の子どもに対してこれだけ手厚く教育をしたのにIQなどの知能には最終的には影響しなかったと考えるとこの程度しか効果がなかったのかと幼児教育にガッカリした人もいるはず。

 

とてもじゃありませんが2018年の日本に当てはめることはできません。

 

特に、幼少期から英才教育を検討しているような家庭では特別なことをせずに普通にしているだけで十分と言えます。

 

ただ、ネグレクトをしていいというわけではないので誤解なきよう。

 

知能にはあまり影響しなかったものの、幼少期から躾を受けることで我慢強さや社会性を子どもたちは身につけることができ、大人になってから借金や犯罪、アルコールなどで身を持ち崩す割合が下がったことがヘックマンの研究で示されています。

 

 

なすべき努力

 

さて、努力ではどうにもならない能力もあるという現実を認めた上でできることを考えていきましょう。

 

まずは先程も述べた躾についてです。

 

犯罪を犯すようでは社会的に成功するのは厳しいでしょうし、自分の下の世話もろくにできなければ労働者としても雇ってもらうこともできません。

 

仮に定職にはつけても浪費癖が激しければいずれ生活が破綻するでしょう。

 

また、学力の面で言えば、読み書き計算といったごく基本的なことは身につけておかなければなりません。

 

現実にはこの3つを身につけていなくても働いている人が現在の日本にもいますが、身についていないと可能な仕事がかなり制限されてしまいます。

 

このあたりは才能の有無関係なく習得すべきことでしょう。

 

次に身につけるべきことについては、閾値を意識すると学校の勉強という結論になります。

 

学歴と野球で比較していきましょう。

 

学歴を得るためには小中高と勉強していくことになりますが、東大合格しなければせっかく勉強した恩恵が得られない、ということにはなりません。

 

仮に東大クラスには届かなくても例えばMARCHクラスに入学できれば十分に勉強した恩恵を得られたと言えるでしょう。

 

将来の日本がどうなるのかはここの議論から外れるので無視します。優良企業に就職するには学歴フィルターを突破する必要があるという2018年現在の前提で話をします。

 

一方で、野球で飯を食っていくとなると容易ではありません。

 

プロ野球選手になる必要があり、勉強で言えば最難関の大学に入らないとお話にならないのです。

 

しかも、プロの選手になっても二軍暮らしが続いて解雇になれば、大卒の生涯収入より遥かに下になってしまいます。

 

野球で生活できるためには、「ここ」というラインを最低限こえなければなりません。

 

甲子園出場程度では野球で食っていけないので、残酷な言い方ですが野球をやっても収入という面では無駄だったと言えます。

 

勉強と違って明確な閾値があるということです。

 

閾値というと芸術の世界にもあり、そういった意味で学校の勉強はもの凄く恵まれています。

 

子どもの頃からフルコミットして才能が足りなかったせいで頂点に辿り着けなかったとしても努力が無駄にならないのです。

 

最も潰しのきく能力といっても良いでしょう。

 

 

これからは多動力

 

堀江貴文さんが自身の著書にて色々なことに次々と手を出してく多動力が重要と主張していますが、子どもの才能を発掘するという意味でも重要なことです。

 

子どもは両親から遺伝子を受け継ぐとはいえ両親と同一人物というわけではありません。

 

ですから、頭の良い家系では子どもの学力も高くて、スポーツ一家なら子どもの身体能力も高い傾向にはあるでしょうが、あくまで傾向です。

 

子どもの才能はやってみないと誰にもわからないんですね。

 

最初のうちは両親が得意としていることを試してみてそこから広げていくというイメージです。

 

堀江貴文さんが述べているように多動力には飽きたらやめるということも点も忘れてはいけません。

 

子どもの教育で言うと、毎日習い事を詰めてパンパンにしてはいけないというわけ。

 

子どもが嫌がっているとか周りから明らかに見込みのない習い事はスッパリやめてしまえば良いのです。

 

我慢強さが身につかないからダメという批判は的外れであり、日々の家庭での躾で教育していけば補えるでしょう。

 

 

自尊心は絶対に失わせてはならない

 

まとめると、

 

  1. 家庭での躾をキッチリしておくこと
  2. 勉強はとりあえずやらせてみること
  3. 両親の得意なことから試して色々やらせてみること

 

この三点が重要になります。

 

そして、1つ追加で最も重要なことを言うと子どもの自尊心を保つことですね。

 

諸外国ではどうなのか知りませんが、少なくともこれまでの日本では努力に対する神話がありました。

 

粘り強く努力することで才能のない者が才能のある者を打ち倒すことにカタルシスを感じる人もいるでしょう。

 

「うさぎとカメ」の話は誰でも知っていますね。

 

お話の中ではカメが勝ちますが、現実にはうさぎが勝ちます。

 

うさぎがサボることはほとんどなくて、しかも凄く才能のあるうさぎは楽しんで走ります。

 

カメが苦痛に耐えていくら走り続けても一生追いつくことはできないのです。

 

人の才能についても差があり、親が努力神話を持っていると子どもが追い込まれていってしまいます。

 

才能が足りなくて結果が出ないだけなのかも知れないのに、努力不足のレッテルを子どもは貼られてしまいます。

 

本来であれば別の道に進んで未知の才能を発揮していたのにも関わらず、自尊心を失ってしまって何もできなくなる危険性もあります。

 

親がかける言葉として、「才能がなくても頑張れば報われる」という言葉は一見優しいようですが、結果を出せなかった時には「お前はダメ人間だ」と突きつけていることになります。

 

子どもの自尊心が失われてしまうとその先何十年もの人生が台無しと言っていいでしょう。

 

親が子どもにできることは自尊心を保ちつつ他の可能性もあることを示してあげることです。

 

ある程度大きくなった子は自ずと色々なことを学んでいき、いつか自分の才能を花開かせるかもしれません。

 

行動遺伝学においては、人は年を重ねるほど環境の影響が減っていき才能で年収が決まるようになるということが指摘されてます。

 

年を重ねるとこれまでの経験によって能力が決まりそうですが逆なんですね。

 

年を重ねると経験によって生まれ持った才能を活かせる可能性が上がると解釈するべきです。

 

ここまで読んで行動遺伝学に興味を持った方はこちらを読んでみてはいかがでしょうか。

 

日本人の9割が知らない遺伝の真実 (SB新書)

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橘玲さんの著書のほうがガツンと入っては来ますが、これまで努力を過大評価していた人にとってはアレルギー反応を起こしかねない劇薬です。

 

橘玲ファンにとっては彼の本のほうが良いでしょうが、安藤さんの本のほうがより一般向けです。