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理解されない片頭痛とその対策

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慢性頭痛の診療ガイドライン2013ー日本頭痛学会

http://www.jhsnet.org/GUIDELINE/gl2013/gl2013_main.pdf

 

日本全体で患者数が約840万人と言われるほどありふれた病気ながら、なんとなく使われがちな片頭痛という言葉。

 

特に若い女性のQOLを下げるもので、周囲の無理解もあって苦しんでおられる方は少なくないようです。

 

怠けているように誤解されがちなのが特徴です。

 

ロキソニンでも飲んどけば大丈夫やろ、くらいに思っている人もいるでしょうが、そんな軽い病気ではありません。

 

頭痛については日本頭痛学会から発表されているガイドラインを読めばこと足りますが、分量が多く現実的ではありません。

 

医学的な正確さは追求しすぎず噛み砕いて説明し、少しでも理解につながればと思います。

 

後で、片頭痛対策についても触れておきますが、特に伝えたいことは2つ。

 

  1. 周りの人は患者を理解してください
  2. 患者はちゃんと病院を受診してください

 

※内容は上記ガイドラインを参考にしています。

 

 

 

 

 

片頭痛とは何か

 

頭痛の中には、脳腫瘍やクモ膜下出血など原因となる病気があって起こる頭痛と、そういった病気がないのに頭痛が起こる一次性頭痛があります。

 

片頭痛は一次性頭痛の中の1つです。

 

死に至る病というわけではありませんが、頭痛や吐き気といった症状のせいで発作中には仕事などがままならなくなります。

 

若い人、女性の方に多いのが特徴です。

 

根本的に治すことはできず、発作の頻度を減らしたり、発作中の症状をやわらげることが治療です。

 

 

片頭痛は末期癌にも相当?

 

 

片頭痛は、患者数と症状の強さを考慮すると一番社会にとって影響のある一次性頭痛と言えます。

 

日本では、片頭痛による年間の経済的損失は3000億円とも言われております。

 

片頭痛は生活の質(QOL)に大きく影響する病気です。

 

片頭痛発作中は頭痛と吐き気のために仕事や遊びができませんし、発作が起こっていないときでも大事な時に発作が起こったらどうしようとビクビク怯えながら生活する患者さんもおられます。

 

周りからするとさほど重大な病気ではないように見えることもあり、周囲からの理解も得られずその点も患者さんを苦しめています。

 

病気がどの程度QOLに悪影響を及ぼすのかという尺度には色々ありますが、GBD studyでは重症片頭痛は重症うつ病四肢麻痺、癌の終末期と同じレベルとして扱われております。

 

驚くべきことに、両目失明することよりもQOLが悪化すると評価されています。

 

もちろん片頭痛患者の多くはそこまで酷い症状があるわけではありませんが、重症の方は非常に苦しんでおられるわけです。

 

周りの方は少しでも片頭痛患者さんに配慮してもらえればと思います。

 

 

片頭痛患者はまず病院に行こう

 

ありふれた病気でありながら病院を受診したことのある片頭痛患者は多くありません。

 

病院を受診してきちんと診断されたことのある患者はわずか3割程度と言われております。

 

最初に片頭痛は一次性頭痛という話をしました。

 

言い方を変えると、あなたの頭痛は症状としては片頭痛でも脳腫瘍など原因となるものがあるかもしれない、ということです。

 

原因となっている病気があればそれを治療しないとお話になりません。

 

片頭痛は、そういった病気がないことを確認して初めて診断ができます。

 

ですので、これまで一度も受診したことがない人はちゃんと病院を受診して頭の画像検査も受けましょう。

 

周りの人から理解してもらえないことは、病院を受診していないことも原因かもしれません。

 

キツイ言い方ですが、ツライツライといいながら一度たりとも病院を受診していない人が周りに理解を求めるのはわがままではないでしょうか。

 

診察を受けた結果、異常なしと言われるかもしれませんが、そこで終わるのではなく必要があれば治療も受けることです。

 

周りの人は検査結果が問題なくても患者さんに配慮してもらえればと思います。

 

ツライ症状があるのは事実なのですから。

 

受診先は、脳神経内科があるところをお願いします。

 

頭痛治療をウリにしている病院の中には、頭痛外来という専門外来を掲げているところもあります。

 

※これまで経験のない急激な頭痛が生じた際にはすぐに受診しましょう。日中の外来が空いていない時間帯なら仕方ないので救急外来に行きましょう。

 

救急外来についてはこちら。

qoltimeandmoney.hatenablog.com

 

 

頭痛の記録を取ろう

 

患者さんは頭痛の記録を取りましょう。

 

外来受診してから医師からそう言われるかもしれませんが、メリットがあるのでぜひやりましょう。

 

  1. 薬物乱用頭痛対策
  2. 予防治療するかの判断材料
  3. 片頭痛を誘発するものの判断材料
  4. 周囲の人への情報提供

 

初めて薬物乱用頭痛という言葉が登場しましたがその名の通りです。

 

頭痛薬を使用しすぎることで頭痛が起こることもあり、しかも薬が効かないので非常にタチが悪いものです。

 

特に、現在片頭痛に対しては一番特効薬に近い存在であるトリプタンは薬物乱用頭痛を引き起こしやすいと言われております。*1

 

薬物乱用頭痛の治療の際に場合によっては入院する必要があるケースもあります。

 

薬物乱用頭痛に怯えて薬を全く使わないのは本末転倒ですが、頭痛の記録を取ることで医師と相談しながら適切に薬を使っていきましょう。

 

基本的には片頭痛の薬は発作時に飲むものですが、頭痛が頻繁に起こるようであれば予防治療を行う必要が出てきます。

 

頭痛のない時でも毎日薬を飲んでいくわけですが、薬にも副作用があります。

 

中には催奇形性があり、妊娠中の女性には使えない薬もあります。

 

若年女性に多い片頭痛においてこれは非常に重要な点です。

 

現時点では妊娠していなくても、これから子どもを作る予定の人は主治医に相談しておきましょう。

 

片頭痛予防は日常生活で気をつけることもありますが、頭痛の記録を取ることが重要です。

 

どういうタイミングで起こりやすいかわかれば対策も立てやすくなります。

 

例えばアルコールは良くないと一般的に言われております。

 

食べ物も影響するとは言われていますが、私はあまり気にしすぎないべきと考えています。

 

チョコレートが有名ですが、実際にチョコレートで片頭痛が引き起こされる人はほとんどいません。

 

食べ物を気にしてストレス溜めるよりは好きなものを食べたほうがいいのではないかと思います。

 

もちろんチョコレートで誘発される人もいますので頭痛の記録は役に立ちます。

 

最後に、周囲の人からの理解を得るにもやっておきましょう。

 

いざ片頭痛発作が起こってから周りに何か伝えるのは大変です。

 

発作が起こってしまうと暗いところでじっとしていたくなるので、喋るのもおっくうになりますし無愛想になってしまいます。

 

体調のいい時から、いわばトリセツを作って話し合いをするのに記録を残しておくと役立ちます。

 

 

結論

 

  • 周りの人は患者を理解してください
  • 患者はちゃんと病院を受診してください

 

周りの人の理解を得るためにも、患者さんは病院を受診しましょう。

 

まだ受診していない人はスタートラインにすら立っていません。

 

最初に挙げたガイドラインには、この記事なんかより遥かに正確で多い情報量が入っておりますし、緊張性頭痛や群発頭痛など他の頭痛についても述べられております。中には性行為に伴う頭痛まで。

 

医師向けのものではありますが、頭痛のことをもっと知りたいという人は読んでみてください。

 

*1:トリプタンは発作をやわらげる薬であり飲んだからといって発作が起こるわけではありません。また全員に効くわけではなく、特効薬とは言えないでしょう。