旬から医師のキャリアについて考える
かつて医師のキャリアといえば医局で出世し、教授になるか関連病院の院長や部長になることなどが成功でした。
それが無理そうなら開業するというパターンの人がほとんどだったかと。
しかし、医師を取り巻く環境は変わり続けており、医局内で出世したとしても昔ほど旨味があるわけでもなく、開業といっても簡単に成功するわけではありません。
バイトを主体にする医師も増えましたが、供給量が増加したため特別なスキルを要さないバイトの単価は下がり続けております。
もっと極端なことを言ってしまえば皆保険制度の崩壊という恐ろしい事態も可能性としてあります。
変化し続ける環境の中医師はどう立ち回れば良いのでしょうか。
答えはそう簡単に出るものではありませんが、他業界の事例についても触れて考えていきましょう。
企業の寿命は人の寿命より短い
企業には旬というものがあります。
かつて日本では終身雇用制度がありましたが、日本の大企業と言えども安泰ではありません。
多くの人が安定を求めて入った企業においても破綻することはそう珍しいことではなく、東芝やJALは完全に潰れたわけではありませんが給料や企業年金がカットされ人生プランが大幅に狂った人は少なくないはずです。
これらの企業の経営者が無能と言いたいわけではなく、世界的な大企業でも同じことです。
アメリカの企業の中でも特に一流の企業から成り立っているS&P500においてもです。
代表的な構成銘柄といえばアップルやアマゾンなどがありますが、2019年の現在から見ればこれらの企業が潰れることはないだろうと思ってしまいがちです。
しかし、実際はそうではなく、1960年代に企業の寿命は61年でしたが2015年にはわずか24.1年になっています。
新卒で入社したとして40代で会社がなくなるというのは考えただけで恐ろしい話です。
新卒で入った所にずっと勤めて定年退職を成し遂げるには幸運に恵まれてのことです。
創業から廃業までの時間を考えるとビジネスの旬は10年程度しかないのかもしれません。
イケハヤはあちゅうはもはや炎上しない
ネット上の言論においても旬があり、例えばイケハヤはあちゅうは容易には炎上しなくなっています。
コンテンツに慣れてしまって同じ方法が通用しなくなってるんですね。
例えば、かつてイケハヤ氏が天候不良で首都圏の公共交通機関が麻痺した際に仕事をこんな時にするとかホント社畜だなという趣旨のツイートをして当時は炎上ネタとなりましたが、2019年の今では何のネタにもなりません。
特にJR西日本は豪雨が予想されると早めに運休をアナウンスするようになり、天候が悪い中無理やり仕事をさせるという時代は終わってしまったわけです。
さらにインターネットでは誰でも情報を発信できるようになったため炎上力のインフレが激しくなっております。
反社会的な言動を呟いたり動画にしないと炎上しなくなってしまいました。
最近のイケハヤ氏の炎上ネタもオンラインサロンのパートナーの経歴詐称問題であり、社畜を逆なでする程度ではもはや誰も反応しないんですよね。
ネット上のコンテンツがどんどんエスカレートしていることは個人が作成したAVにも表れています。
個人作成のAVで売れるものは、ガチの盗○モノやガチのロ○などであって普通のエロ動画だとコンテンツにならなくなってしまったという話です。
もちろん医師を現役でやっている人は今の仕事を失うリスクがあるため、反社会的なネットコンテンツで稼ぐことは到底不可能です。
ただ、ネット上では無茶をしないとキツくなっているんですよね。
学問の世界でも旬がある
アカデミックな業界でも流行り廃れというものは存在し、医学でいうと再生医療の研究費を取りやすくなった点においてiPS細胞の山中先生の影響は無視できません。
また、平成31年度東京大学大学院の入学式の祝辞にて大西克也先生が学説の波について述べられております。
>学問や学説にも流行りがあります。主流の学説に乗って論を進めると、批判のリスクは減らせるかもしれません。流れに乗るのは楽なことです。しかしそれでは本当の意味での学力は身に付きません。ブレイクスルーも生まれません。たとえ一般に受け入れられている考え方であったとしても、絶えず自分の目でその拠り所を検証し、納得できなければ受け入れない勇気が必要です。乗るか乗らないかは自分の学問的良心に依り、責任を以て判断する、それが「知のプロフェッショナル」としての矜持ではないでしょうか。これは学問だけではなく、世の中の全てについて言えることだと私は思います。
波に乗るか、流されず自分を貫くか、生き方は人それぞれなので、ここではどっちが正解かという話はしませんが、学問にも旬があることが厳然たる事実というのは確かです。
また、社会環境の変化により錆びついたものと化してしまうこともあります。
例えば、フェミニストの上野千鶴子氏ですが、女性の権利向上には経済成長が大前提ということを理解しておらず、日本の人口が増え続けた時代には彼女の論説が成立していましたが、これから人口減少を迎える日本において衰退を容認する発言までしているわけで、むしろ女性の権利を毀損する方向に向かってしまってます。
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同じ話がいつまでも通用するわけではないということです。
環境が厳しいのは医師だけじゃないから甘えるな
医師を取り巻く環境が厳しいのは事実ではありますが、どの業界でも大変なのです。
これまで好き勝手にお金を使っても生活には困らなかった医師は時代に恵まれていただけなのかもしれません。
これさえやっておけばOKという安易な方法はないわけであって、周りの環境から目を離さず学び続ける姿勢が重要ではないでしょうか。
変化を恐れないことについては「LIFE SHIFT」において述べられております。
先述した企業の寿命の短さについても言及されております。
寿命が伸びた現在では、同じ仕事だけをやり続けて「アガリ」を迎えて悠々自適な生活を送るのは不可能です。
過酷な労働をし続けても体がもたないことについても指摘されております。
まずは一生同じ仕事をするという固定観念を外して転職そのものを受け入れることからでしょうか。
職を変える際には、汎用性の高い技術・スキルや良好な評判が重要とのことで、汎用性の高いスキルというと営業力や最低限のパソコンスキルなどがあると考えられます。
ニッチ過ぎるとごく限られた場でしか役に立たないのは難しい問題です。
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特に医師の世界では専門性の高さを身に着けても報われるとは限りません。
好きでやっているのならもちろん問題ありませんが、打算で習得を試みるのは安易かもしれません。
つんく♂から学ぶ包括的な視点
つんく♂氏は癌により声帯摘出をすることになり、筆舌に尽くしがたい苦悩を抱えたことでしょうが、仕事を狭い視点で捉えていなかった点は重要なことでしょう。
つんく♂さん 新入生に声なきエール 「こんな私だから出来る事を」 2015.4.5
当時シャ乱Qのボーカルとして十分に売れておりそれだけで生活に困ることはなかったでしょうが、アイドルグループのプロデュースなど音楽を中心にしてマルチに仕事をしていました。
もし、つんく♂氏が単に歌手だけをやっていたとしたらどうでしょうか。
声を失った時点で彼のキャリアはそこで終わりになりアイデンティティそのものにも関わる重大なことになっていたでしょう。
彼が現在も活動できるのは自分の声という武器にのみ拘らず広い視野を持っていたことが大きいと考えられます。
医師の仕事というと病院で目の前の患者の治療を行うことですが、それに拘らず人や健康といったより広い視野を持つことで見えてくるものもあるかもしれません。
ちなみに、予防医療がすぐに思い浮かぶところですが、歯科医が飽和したのは歯科医の数が増えただけじゃなくて虫歯予防が進んで虫歯患者が減ったことも大きい点は忘れてはいけないでしょう。水を差すようですが。
未来の予測と鞘抜き
一生ずっと同じ仕事をしないとなると、未来を予測して先回りしたくなります。
「未来に先回りする思考法」はその点について論じており、結論から言うと完全に予測することは不可能ということです。
Googleの20%ルールなどは予測不可能との前提に立っているものです。
>本当に合理的な判断とは、自分が完全に合理的な選択ができるという考えを諦めて、不確実性を受け入れつつ、意思決定を行うことです。
結局は確率論でしか未来を語ることはできず、テクノロジーの進歩スピードや、予測の際に「今」自分ができることに縛られて将来の自分を過小評価してしまうことが問題となります。
ただ、一貫して時代の流れを見ることの重要性は強調しており、何でもありというわけではありません。
一方で、鉱脈を見つける以外にも鞘を抜くことで利益をことも可能です。
上手く鉱脈を掘り当てたとしても10年、ヘタしたら1年程度しか持たないかもしれません。
鞘の場合も長持ちしない可能性はありますが、国の制度から生じる歪みはすぐには解消されないため長持ちすることを橘玲氏は指摘しております。
これらを黄金の羽根と彼は呼んでいます。
制度の歪みから鞘を抜き取ることに抵抗のある人もいるでしょう。
しかし、資産を手に入れるとレバレッジをかけることができるためより大きな社会貢献ができるわけで、最初に金に走って後で思う存分社会貢献するという方法もあるわけです。
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とりあえず成功する方法については、こちらの記事に書いておりますが、力をどう利用するのかはアナタ次第です。